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シックハウス症候群

ホルムアルデヒドだけではない

2003年に施行が始まった国のホルムアルデヒド規制によりずいぶん問題が減ったように思えます。 ただ、ホルムアルデヒド以外の化学物質は厚労省の指針値はあるものの、しっかりした規正はなく、各製造業者、工事会社等の良心にゆだねられている状況が続いています。 数は減ったものの、相変わらず苦しんでいる多くの人たちがいます。 健康な人間にも何らかの影響があるかもしれません。 特に子どもたちへの影響が心配です。 欧州並みの規正が望まれるところです。 以下は毎日新聞記事からの抜粋です。

化学物質過敏症(CS)とは

自宅、オフィス、学校で化学物質を浴び、シックハウス症候群になった人たちを取材 してきた。中でも化学物質過敏症(CS)という重症例の人は、日常生活に著しい支障 が出ていた。苦しみは想像を超えていたが、危険な化学物質は身近にあふれており、誰 がなっても不思議ではないのだ。多くの人にこの「環境病」の認識が広まらないと、被 害者は増え続けるだろう。

CSは、浴びた化学物質の総量が一定レベルを超えた時点から、極めて微量でも体が 反応してしまう病気だ。典型例は、新築や増改築で建材に含まれていた化学物質で目や のどの痛みなどのシックハウス症候群の症状が出て、CSに至るパターンだ。たばこの 煙、化粧品、消毒薬などにも反応し、重い症状では、耳から血が出たり、呼吸困難にな ったりする。

CS患者に会い、メモを取ろうとすると「そのペンはだめ」と言われ驚いたことがあ る。ペンのインクには、化学物質が含まれており、鉛筆に持ち替える必要があった。面 食らったが、もし予備知識がなかったら、もっと戸惑いは大きかっただろう。実際、多 くの患者は、周囲から「気のせいではないか」「精神的な問題だろう」と冷ややかな反 応を受けてきた。しかし、患者が、超微量の化学物質を感じることは科学的に証明され ているのだ。

印象に残ったのは神戸市の40代の主婦だ。自宅は95年の阪神大震災で半壊したが 、なんとか家族でとどまった。ところが、周囲の家が倒壊し、解体、新築が相次ぎ、建 材のにおい、微粉じんや野焼きの煙が絶えず飛んできた。シロアリ防除剤などの化学物 質も一緒に流れてきたとみられる。遮る建物がなくなり、幹線道路の排気ガスも入って きた。やがて目と頭の痛み、はき気に襲われ、99年に専門医がいる北里研究所病院で CSと診断されたという。

翌年も症状が悪化し、多様な化学物質に反応し出した。それでも息子2人が受験の大 事な時期だったため、マスクを三重にかけて家事を続けようとした。その時の苦しみを 「泥水の中を息を止めながら泳ぎ、何とか息継ぎをして、またおぼれるように泳ぐよう だった」という。だが、体は耐えられず、「受験なのに息子たちに十分にしてあげられ ない」と泣く泣く自宅を離れた。それから主婦は空気のきれいな場所を探し求め、よう やく見つけた伊豆方面で現在、一人で転地療養しているが、症状は一進一退という。こ うした痛みを周囲に理解されない人は少なくないのが実態だ。

子どもがシックハウス症候群やCSになって、学校で苦しむ「シックスクール」も深 刻である。化学物質に反応して体がだるいのに、教師から「やる気のない子」「落ち着 きのない子」と切り捨てられることもある。子どもは自分の症状を説明できず、教育を 受けたくても受けられなくなる。

校内の化学物質に体が反応しているのに、本人も学校側も気づかないようなケースが ある。昨年度の不登校(30日以上)の小中学生は文部科学省の調査で約14万人いる が、「シックスクールが影響している子どももいるのではないか」と疑う人は多い。

強調したいのは、こうした児童、生徒、主婦ら多くのCS患者には、全く罪がないと いうことだ。国は、97年にようやく原因物質であるホルムアルデヒドに室内濃度の指 針値を定め、今年になって建築基準法などの改正で使用制限など法規制に乗り出した。 国や関係業者が、原因となる化学物質の危険性に対して、どの時点で認識していたかは 今後議論になるだろうが、一般市民には防ぎようがなかったことだけは確かだ。CS患 者が安心して暮らせるよう社会的に保障したり、CSを保険診療の対象にするなど支援 の仕組みが必要だと思う。

柳沢幸雄・東京大大学院教授(室内環境学)は「CS患者は、かつての水俣病のよう に原因不明の病気とみられることが多い。化学物質が関与していることが次第に分かっ てくると思う。患者の声に耳を傾けることが第一歩」と話す。

私たちは多くの化学物質の恩恵も受けて生活している。しかし、複数の化学研究者は 「危険な殺虫剤や農薬類が公共空間などで安易に使われ過ぎている」と指摘する。米国 では環境保護庁(EPA)が「教室内の空気の質は成績に影響する」と報告している。 被害がこれ以上広がらないように、疑わしい物質は使用を回避できるよう法整備を急ぐ べきだと思う。

[毎日新聞(2003.1.30)]